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「ルート66をゆく」

ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて (新潮新書)
松尾 理也
新潮社
売り上げランキング: 210,596

 本書のきっかけとなったのは、米大統領選における「分断」だという。アホだ負けだと言われていた共和党候補が、実際の大統領選では、民主党候補に票数では負けたが選挙人の数で勝って大統領に選ばれた。

 というわけで2006年に出版された本書は、ジョージ・W・ブッシュ大統領当選を背景に、アメリカの「マザー・ロード」ことルート66(国道66号線)沿い、アメリカ中西部「ハートランド・オブ・アメリカ」に住む「ふつうのアメリカ人」とその保守志向を取材した本だ。

 ミズーリ州セントルイスでは、福音派教会のエンターテイメント性の高い説教を取材している。小さな都市ではないのに盛り場といえるような場所がほとんどなく、赤ちょうちんに集まるかわりに協会で説教を聞くのではないかと著者はいう。日本に住んだことのある教会のサポートチームのメンバーも、日本人の井戸端会議から赤ちょうちんまでのさまざまなつながりは、米国人の宗教心に近いのだと発言している。

 その福音派的宗教観に対してわれわれ平均的な日本人が奇異に感じるのが反進化論だろう。よく言われるように、高い教育を受けた知的な人にも進化論を否定する層があり、ID論を理論武装している。こうした反進化論などを背景に、進化論を教える学校を拒否するホームスクール運動があると本書でも書かれている。ちなみに、トランプ政権で任命された教育長官は、そうした運動を支持していると言われている。

 オクラホマ州オクラホマシティーでは、州兵について取材している。州兵は、それまでの安全な軍というポジションから、対テロ戦争でがらりと変わり、イラクに派遣された米兵の約40%を占めるようになったという。オクラホマシティーの州兵の母は「ブッシュや政府を批判するのは自由だけど、兵士の悪口は絶対にだめ」とその愛国観を語る。

 一方、オクラホマシティーで保守系新聞を発行する男は、(彼のいう)保守は共和党の中でもマイノリティだと考えており、「ブッシュはリベラル」と発言し、「グラスルーツ保守主義と政治エリートによる保守主義とはまったく違う」と主張する。大きな政府を嫌う彼らの考えでは、竜巻で被災者の家の修復を政府が税金で支援するのは道徳に反するのだという。

 ニューメキシコ州アルバカーキでは、州間高速道路の建設によって衰退したルート66の復興活動を取材している。「なぜ、ルート66が人気があるのかって? そりゃ、マーケティングだよ」という身もふたもない言葉。その背景にあのは、伝統とノスタルジーだという。

 アリゾナ州ダグラスでは、国境や人種の問題を取材している。高級住宅街の周囲にフェンスを張りめぐらして入口もゲートで遮断する「ゲーティッド・コミュニティ」。また、不法移民監視団体「ミニットマン・プロジェクト」の主宰者も取材する。「ベトナム戦争は反対、アフガンは賛成、イラクは反対」という複雑な立場をとる一方、「警察は侵入者の言いぶんを聞いてばかりだ」と主張する。

 最後にテキサス州アマリロを取材している。著者はウディ・ガスリーのファンで、ウディ・ガスリー博物館があると知って訪問する。リベラルかつ草の根の立場であるウディ・ガスリーは、リベラルからも保守からも認められたり攻撃されたりする両義的な存在なのだという。

「Q.E.D. iff」6巻、「C.M.B.」34巻

 人気コミックシリーズの最新刊が、今回も2冊同時発売された。以下、ネタバレに気をつけているつもりだけど、未読の方は念のためご注意を。

Q.E.D.iff -証明終了-(6) (講談社コミックス月刊マガジン)
加藤 元浩
講談社 (2017-02-17)
売り上げランキング: 192

 「Q.E.D. iff」は、「地球に落ちてきたと言っている男」「急転」の2篇を収録している。どちらもラストが印象的だった。

 「地球に落ちてきたと言っている男」は、大学生になってもあいかわらずのミステリ研究会がらみでコミカルなタイトルだけど、意外とシリアスなalienの話だった。結末のこの可能性は気付かなかったなあ、映画でよくあるものなんだけど。それにしても、ミステリ研究会メンバーのお婆ちゃんって、女傑ぞろいだ。

 「急転」は、人気ドラマのプロデューサーが転落死した事件をめぐる、アリバイ崩しモノ。惜しい感じの刑事さんがいい味出してる。

C.M.B.森羅博物館の事件目録(34) (講談社コミックス月刊マガジン)
加藤 元浩
講談社 (2017-02-17)
売り上げランキング: 253

 「C.M.B.」は、「消滅飛行」「マリアナの幻想」(前・後)「古屋」の3篇を収録している。

 「消滅飛行」は、1920年代に墜落して行方不明となった飛行機を探す話だ。博物ネタはデ・ハビランド・プス・モス。

 「マリアナの幻想」は、ブラジル移民の勝ち組(第二次大戦に日本が勝ったというalternative factを信じた人たち)だったイケイケの男がなぜ日本に帰り、老人になってどこに行ったか、そして魔女の宝の正体をたどる。これは確かに魔女だわ。

 「古屋」は、東京から田舎に引っ越した夫婦のまわりに起こる不可解な事件の意味を解く。何が起こっているかわからないまま話が進み、それを見方一つでひっくり返す展開と、その後に見えたものがいい感じ。

「真田より活躍した男 毛利勝永」

真田より活躍した男 毛利勝永
今福 匡
宮帯出版社
売り上げランキング: 355,970

 大河ドラマ「真田丸」の最終回、大坂夏の陣の天王寺の戦いでは、毛利勝永率いる毛利隊の無双っぷりが目立った。ゲームならチートかバグっかというぐらい。江戸時代に「惜しいかな、後世、真田を云いて毛利を云わず」とも書いた人もいたとか。

 本書ではその活躍のわりに知名度の低い毛利勝永(吉政)と父吉成(勝信)の生涯をたどった評伝だ。

 毛利勝永の毛利氏は元は森氏といい、出自はいまひとつ不明らしい。なので、森可成・長可(鬼武蔵)・長定(蘭丸)の一族という説もあるそうだけど、著者はそれは可能性が低いんじゃないかと書いている。

 吉成は豊臣秀吉に黄母衣衆として仕えた人で、秀吉の九州制覇にともない、黒田孝高(官兵衛)と分ける形で豊前を領地とした。勝永もそこで、当時鍋島家の主君だった龍造寺家から正室を迎えている。ちなみに、大坂の陣のときに勝永の大坂城入りを妻が背中を押した逸話があるけど、史実では正室はそれよりだいぶ前に若くして亡くなっているとか。

 関ヶ原では西軍について敗れて、親子で土佐に流される。細川ガラシャ自害もあった大坂城人質騒ぎのときに、山内一豊の妻を助けたのが縁で、山内家が助けたとのこと。九度山の真田に比べるとだいぶ待遇もよかったらしい。

 大坂夏の陣で勝永は上記のとおり活躍し、真田隊とともに家康を追いつめたものの、真田隊壊滅のあたりから大坂城側の敗色が濃くなる。ここで毛利隊は城に戻る兵を助けて殿をつとめた……ってどんだけ活躍するんだ。最後に勝永は大坂城に戻り、秀頼を介錯したとかしないとか(なにせその場にいた人はみな亡くなったので)。この手の例に漏れず生存伝説があって、土佐に戻ったという言い伝えもあるらしい。

 ちなみに著者は毛利勝永の知名度が低い理由として、「所縁の地元が存在しない」ことを上げている。なんでも、領地の九州では領民の評判がよくなかったとか。

「本当はブラックな江戸時代」

本当はブラックな江戸時代
永井 義男
辰巳出版
売り上げランキング: 8,547

 人間は極端から極端に走りやすいもので、「いままでAと言われていたが、実はBだ」という説が出ると、一気にBに走りがちだ。健康情報とか、人物評とか。

 江戸時代についても、古くて非合理な時代という認識だったのが、江戸は実はそれなりに進んだ都市だったらしいという説が出ると、一気に「江戸はユートピア」のような声も出てくる。

 本書はそれに反論して、江戸社会の悪い部分を取り上げている本。まあ実際には本書でも書かれているように、同時代の他国より進んでいた部分がある(ヴェルサイユ宮殿の庭が糞尿だらけだったという時代)が、現代から見ると遅れているわけで。いい面と悪い面を合わせてバランスをとって解釈するのがいいと思う。あと、「エコな社会というより、物が高かったのでリサイクルが進んだだけ」というのは、まあそれは別にいいんじゃないかと思った。

 本書で取り上げられているブラックな江戸時代からいくつか。

  • 住み込み奉公での休日は年2日
  • 大店で31年間に326人が辞職したうち、病気で郷里に帰ったのが82人、死亡が64人、出奔が44人、解雇が26人
  • 通り魔殺人は多かった。動機として「生きた人間を槍で突いてみたかった」と、現代の通り魔殺人と似たような供述も
  • 窃盗でもすぐ死罪になるので、かえって届け出のない犯罪が多かった
  • 鮮魚を食べて当たっても普通
  • 便所は汲み取りだし生ゴミのビニール袋もないしで、長屋は悪臭
  • 声がつつぬけの長屋でも孤独死
  • 武士でも文盲多し
  • 幕末のイギリス人外交官アーネスト・サトウいわく「大名は権力もなく、知能の程度は水準をはるかに下回っている」

「江戸将軍が見た地球」

江戸将軍が見た地球<江戸将軍が見た地球> (メディアファクトリー新書)
KADOKAWA / メディアファクトリー (2013-02-22)
売り上げランキング: 183,436

 題名だけだと「実は江戸時代の将軍は世界のことについて詳しかった」という本のように見える。しかし実際には違い、徳川15代の政権がそれぞれ海外(主にヨーロッパ)にどのように対応したのかを中心に、各時代の政策の流れを語る本だ。

 とはいえ、15代の中で、海外に対して積極的なアクションを取ったのは初代の家康と2代の秀忠、そして15代の慶喜ぐらい。あとは、いわゆる鎖国を完成させた3代家光と、実学に限って蘭学をバックアップした7代の吉宗か。特に8〜14代については、能力が低かったり周囲が抑えてたりで政治自体にあまり関われなかったという。

 家康と秀忠の対応は、ヨーロッパ各国が覇権を争う大航海時代に、それぞれの国との個別の交渉が鍵だったことがわかる。基本的にはよく言われるようにカトリック国を締め出す方向で、でもそのためにスペインに近付いたり手を切ったりと粘り腰の外交をやっている。あと、やはりウィリアム・アダムス(三浦按針)とヤン・ヨーステンは重要だったんだなと。

 著者は幕末維新期が専門なだけあって、慶喜については特に詳しく書かれている。フランスびいきでナポレオン好きなところについては、後の明治初期政府のプロイセンびいきなところと対照的だったり。

 ちなみに、「鎖国」について著者は、「『鎖国』という名称は江戸時代後期に逆輸入されたものだが、相当する制度群があって『いわゆる鎖国』は存在した」という立場をとっている。

「BOX 〜箱の中に何かいる〜」

BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニングコミックス)
講談社 (2016-11-22)
売り上げランキング: 3,110

 諸星大二郎による、脱出ゲーム+デスゲーム+ホラー+異界+伝承+化物+パズル+ミステリーな新作。続きが楽しみ。

「決戦! 桶狭間」

決戦!桶狭間
決戦!桶狭間
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冲方 丁 花村 萬月 宮本 昌孝 富樫 倫太郎 矢野 隆 木下 昌輝 砂原 浩太朗
講談社
売り上げランキング: 83,659

 1つの合戦について1人の人物を1人の作家が担当する合作歴史小説シリーズ第5段。

 今回、花村萬月「漸く、見えた。」が問題作だ。今川義元が討たれた後、その首の一人称による“意識の流れ”の形式で、しかも句点なしで流れるように語る。これは、ノれるかどうか読む側の個人差や気分差が大きく出るだろうなあ。私の場合は、寝る前のゆったりした状態で読んだので、わりとノって読んだ。

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