本を読む

読書やコンピュータなどに関するメモ

「ヴィクトリア朝時代のインターネット」「謎のチェス指し人形「ターク」」

 都会の大きな書店でいろいろな本を眺める機会が減ったこともあって、本に関する自分のアンテナが錆びついてるなと思う。で、この2冊を「新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2012年版」で知って、その場で買って帰った。

 2冊とも同じトム・スタンデージ著で服部桂訳、NTT出版から同時発売となった本で、どちらもえらく面白かった。


ヴィクトリア朝時代のインターネット
トム・スタンデージ
エヌティティ出版
売り上げランキング: 5278

 「ヴィクトリア朝時代のインターネット」は、情報通信技術が19世紀の世の中を変えていく様子を描くノンフィクション。ちょっと長いけど、本書のまえがきから引用してみる。

「ヴィクトリア女王の治世には新しいコミュニケーションの技術が開発され、とてつもない距離を即時に越えるコミュニケーションを可能にし、それが結局、世界をあっという間にかつてないほど小さなものにしてしまった。大陸や海を越えてケーブルが引かれることで世界規模のコミュニケーション・ネットワークができ、それがビジネスのやり方を革命的に変化させ、新しいかたちの犯罪を生み出し、利用者を情報の洪水で呑み込み、これを介した恋も芽生えた。秘密の鍵を誰かが作ると、他の誰かが破った。このネットワークがもたらす恩恵を手ばなしで擁護する人がいれば、それを否定する懐疑派もいた。政府や当局は、この新しいメディアを規制しようとして失敗した。ニュース報道から外交まで、あらゆるものにどう向き合うべきかを、一から考え直さなくてはならなくなった。その一方で、その周辺では、独自の習慣や言葉を持ったテクノロジーのサブカルチャーが立ち上がってきた」

 というわけで、電信の誕生から衰退までの間に社会がいろいろ変化していくようすが、さまざまなエピソードをからめて語られる。書名どおり、インターネットのときと同じようなさまざまなことが起こった様子が描かれている。

 そこからインターネットの今やこれからについて考えるのもいいけど、それより細かく描かれた各エピソードが滅法面白い。最初の海底ケーブル敷設をめぐる無知やごたごたは、よくそんな調子で通ったなとか。料金を節約するために短い言葉で伝える工夫と、それで起きたトラブルとか。自分を示すためのsigとか。電信による駆け落ち結婚とか。ニュースの規模とスピードが圧倒的に変わった話とか。電信が世界に平和をもたらすという思想とか。ウォール街に迷い込んだエジソンとか。

 あと、気送管(エアシューター)が電信の短距離中継用として発明されたというのは知らなかった。

謎のチェス指し人形「ターク」
トム・スタンデージ
エヌティティ出版
売り上げランキング: 430

 「謎のチェス指し人形「ターク」」は、ポーの「メルツェルの将棋差し」などでも知られる18世紀の自動チェス人形「ターク」の数奇な運命をたどるノンフィクション。

 製作者ケンペレンにはじまる代々の所有者と、タークの謎を解こうとする人々について、それぞれ詳細に描いているのが、「ヴィクトリア朝時代のインターネット」と共通する手法だ。当時のタークにまつわる噂とその検証まで細かく語られている。

 ターク自体はトリックなのだけど、結果的に自動紡績機のカートライトや、階差機関と機械知能構想のバベッジ、“観客を発明した男”P.T.バーナム、推理小説の祖であるポーに影響を与えたというあたりも面白かった。

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