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「害虫の誕生」

害虫の誕生―虫からみた日本史 (ちくま新書)
瀬戸口 明久
筑摩書房
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 本書によると、国語辞典が「害虫」という項目を載せるようになったのは、20世紀以降だとか。それまでは、農作物の虫害は天災の一種と考えてられていたという。

 それが、文明開化にともなう「上からの強制」によって害虫駆除や衛生化が進められて、「文明的」な町が作られていったというのが、本書による日本の害虫の歴史だ。ちょうど、上からの強制によって文明国となった明治期の日本のように。ただし、著者は単純な「近代化や自然改造は悪」という考えにも与しない。

 という観念的な面もありつつ、それ以上に、洋の東西を問わず、人間が害虫に悩まされてきた歴史や、その研究の歴史、駆除技術の歴史などが紹介されていて興味深い。19世紀まではハエはむしろ「小さくてかわいい動物」とされていた、というトリビアもあったり。

 ちなみに、本書のオビには「なぜゴキブリは嫌われるのか?」とあるが、ゴキブリが出てくるのは序文のみ。おそらく、現代でわかりやすい害虫ということでピックアップされたのだろう。

 以下は、本書を読まないとわからないだろう個人用メモ。

  • 国語辞典が「害虫」という項目を載せはじめるのは20世紀以降
  • 「蝗」:虫害全般を指す
  • 江戸時代
    • 虫油駆除法
    • 虫送り(祈祷)
  • 虫害は人間の力の及ぶものではなく、天災と考える自然観
  • 虫の自然発生説(日本でも西洋でも)
  • 欧米
  • 中世:動物裁判
  • 農業が学問となったのは19世紀ドイツ
    • それでも害虫を扱う学問はない
  • 応用昆虫学:19世紀後半のアメリカ
  • ハッチ法(1887年)
    • 州立農事試験場
  • 害虫防御技術の技術革新
    • 化学殺虫剤:パリス・グリーン、砒酸鉛
    • 天敵導入:ベダリアテントウ
  • 明治日本政府
  • 自然の管理
    • 虫害の「発見」
  • 農学研究体制
    • 内務省勧農局
    • 駒場農学校(現在の東大農学部)
    • 札幌農学校
    • 国立農事試験場
  • サーベル農政
    • 警察の取り締まりによって農業の近代化を実行
    • 反発
    • 筑後稲株騒動
    • 上からの文明開化、公益
  • 名和靖、名和昆虫研究所
    • 昆虫思想の啓蒙
    • 「昆虫に益と害あり。国家の経済に関すること頗る大なり。益虫助くべく害虫除かざるべからず」
  • 明治に日本を訪れた外国人は、蚤やシラミ、蚊の多さに悩まされた
  • 熱帯医学の成立(19世紀末)
    • パトリック・マンソン、象皮病患者の血を吸った蚊の体内で寄生虫フィラリアが成長していることを発見(1887年)
    • 病気が虫によって媒介されることが明らかに
    • 多くの植民地を持つ英国
  • 蚊を駆除しようとする対蚊法(ロナルド・ロス)と、キニーネによる対原虫法
    • 衛生害虫の根絶は不可能、という考え
  • 日本のマラリア(おこり)
    • 北海道:大正期には収束し、昭和初期まで。
    • 台湾
  • 明治・大正期の日本の寄生虫学者の多くは動物学者
    • 医学では周縁扱い
    • 西洋と同じく、植民地統治の学問として成立
  • 戦前期には蚊やハエを研究する昆虫学者はほとんどいなかった
  • 台湾
  • 1910年代まで マラリア対策が開始
  • コッホ法
    • 対原虫法重視
  • 対蚊法
    • 自然に勝てないとする考え
    • 住民へ蚊帳や蚊取り線香の啓蒙はした
    • タップノミー(カダヤシ)を放流
    •  日本で特定外来生物に指定されているのは、このときのもの
    • 竹林伐採、下水溝や用水路の対策
    •  生態系の改変
    • 警察権力、強制、悪評
  • ハエ
  • 19世紀以前のほとんどの人々にとって、小さくてかわいらしい生き物
  • 19世紀の戦場における感染症の蔓延
    • 腸チフス
  • 1910年代以降、「不潔なハエ」の根絶運動
    • 不潔な虫としてのイメージは希薄
    • 動物愛護団体が激しく抗議
  • アメリカでハエ取りキャンペーン
  • 連邦農務省の昆虫学者たち
  • イエバエをチフスバエと呼ぶキャンペーン
  • 日本
  • 江戸時代:ありふれた昆虫
  • 20世紀 コレラの媒介者として
  • 大正期にハエの駆除運動
  • 衛生展覧会
  • 関東大震災をきっかけに、賞金つき駆除競争
  • 寺田寅彦批判:生態系を崩す
  • スラム排除
  • 「清潔で美しい都市」づくり
  • 日本の戦後の農村
  • 土地改良、用水・排水の整備
  • 昆虫が媒介する病気も急速に消える
  • 1889年 カリフォルニア
    • イセリアカイガラムシを駆除するためにベダリアテントウを導入、劇的な効果
    • 各国で導入
  • 1927年 農林省 ニカメイガプロジェクト
  • 天敵導入
    • 古くからいる害虫は外から持ち込んだ天敵で防除するのは困難
    • 日本の天敵研究が急速に進展
  • 誘蛾灯
    • 東京芝浦電気が参加
    • 青色蛍光誘蛾灯
    •  戦争のため、普及は戦後
    • GHQによる奨励中止
  • 殺虫剤を含む日本の化学工業は第一次大戦により発達
  • 1923年 砒酸鉛の国産化
  • 多くの殺虫剤が生産される
  • クロリピクリン
  • 発疹チフス対策のシラミ駆除に、毒ガスから転用(米)
  • 現在でも土壌消毒用の農薬として使われる
  • 青酸ガス
  • 陸軍開発の殺虫剤 サイローム
  • 毒ガス兵器に転用
  • 戦後、帝人の殺虫剤テジロン
  • 有機リン化合物
  • 第二次大戦期ドイツ
  • サリン、タブン
  • もとは1930年代の農薬研究
    • そのまま化学兵器担当部局に送付
  • 除草剤2,4-D
  • 第二次大戦期アメリカ
  • ベトナム戦争の枯葉作戦
  • DDT
  • スイスで農業害虫向け殺虫剤として開発
  • シラミ駆除剤としても
  • 米軍がマラリアと発疹チフスの対策に採用して生産が飛躍的に伸びる
  • ノーベル医学生理学賞
  • 米国 戦争と害虫駆除のイメージが互いに比喩となる
  • 日本では昔から合戦を「虫と虫」の戦いにたとえて風刺する文化
  • 1940年、日本軍の飛行機が中国の寧波で飛行機から穀物や綿を投下
  • 大量のノミ、ペスト
  • 「西洋文明=近代科学=自然破壊」というテーゼ
    • 東洋への期待
    • 二元論?
  • が、江戸時代の人々も害虫に苦しめられていた
  • ウィルダネスから里山へ
  • 総合防除
    • 1950年代アメリカの昆虫学者
    • 一定以下の水準ならば駆除しなくていいという考え
      • コスト
  • 1990年代 生物多様性

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