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「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に
小林弘人
バジリコ
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 雑誌「WIRED日本版」「サイゾー」やWeb「ギズモード・ジャパン」などを創刊してきた「こばへん」さんによるメディア論。サブタイトルやオビで、旧来のメディアへの批判の本のように見せているのだけど、読んでみたら、実は「編集」という行為への愛を説く本だった。

 なにしろ、

編集とは「愛」

とか書いてあるし。といっても、

もちろん、本書をここまで我慢しながらお読みいただいた皆さんには、わたしが雑誌という言葉を使ったとしても、それが雑誌コードを取次会社から取得し、全国のコンビニや書店で販売される紙のアレを指すだけの狭義な意味でないことはご理解いただけるかと思います。

ということでもある。

 第三者的にメディアを論じるのではなく、「編集者」としての立ち位置から、これからの「自分たち」の方向性について論じた本だと思う。案外、編集論としてもネット論としてもオーソドックスで、であるがゆえにリアリティがある。

 以下、こばへん名言集をカテゴリーごとにメモ。これだけではなんのことかわからないけど。

誰でもメディア

  • 「いろんな組織がメディア化しているということなんです」
  • 「これは、不動産情報サイトですが、ある意味コンテンツの見せ方やテーマの切り口が「編集」されたコンテンツなのです」
  • 「ネット上で情報発信するあらゆる企業は、自分がメディアであるという自覚を持つべきなのです」
  • 「プロでない人々がいつでもそれを使って、新しい文法を発見することができることこそ、「誰でもメディア」の醍醐味でもあります」

ストーリーとコミュニティの提供

  • 「特定の読者に対して情報を提供し、コミュニティを組成し、そのコミュニティに価値が宿るのではないでしょうか」
  • 「メディアにおいては、アテンションこそが通貨です」
  • 「今後の企業活動におけるメディア戦略は、「PR」よりも、「ストーリーの提供」という方向に軸足を移しつつあると考えます」
  • 「これからの編者は、単にコンテンツをつくるだけではなく、人の動線というものをどう設計できるかが求められていると思います」
  • 「ジャービス氏は「雑誌の価値は編集者でも、記事にあるのでもなく、それは雑誌を取り巻くコミュニティであると言います。わたし自身も、まったく同じ結論を抱いております」
  • 「クリエイティブの原点も、この共感の創出にあるのではないでしょうか」
  • 「新しい価値を創出する場合、コンテンツよりも文脈を編むことのほうが重要であり、それはある意味、より創造的な方向を選択するということを意味します」
  • 「(巷にあふれる)「日刊あなた」成功の可否は、「あなた」個人がメディアとして他者に影響を与えて、価値を創発できるかどうかがカギを握ります」
  • 「多くのフォロアーで構成されるナノメディア空間のなかで、どのような足場を築くのかということが、メディア設計の出発点になってくるだろうと予期します」
  • 「もし、空虚なコンテンツばかり選ばれるのであれば、それは民度の反映なので仕方ないことでしょう。しかし、そうだとすれば、カリスマ書店員のようなコンテンツ・ソムリエが人為的にコンテンツを紹介することが、クローラーやCGM全盛時代には改めて高付加価値を与えるであることも予見されます」
  • 「フローが高くなっても人間にとっての時間は有限ですから、閲覧できるコンテンツ数は限られています。そんななか、「なにを知るべきか、またどのような意味があるのか」といった文脈を編むことが、より重要になってくるかもしれません」
  • 「「ヴィレッジバンガード」や「まんだらけ」はまさに本付きディスティネション・ショップだったかと思います」

マスからニッチへ

  • 「マスへの訴求は「認知獲得」ですが、ネットのメディアはインフルエンサー対象のものが少なくありません」
  • 「コストを鑑みると、成立しない規模の市場もあるわけです。(中略)実はニッチになればなるほど、高給取りの社員が多い既存の大手出版社いは扱えなくなるわけです」
  • 「ウェブに手薄でありながらも、ニッチなコンテンツを有するメディアほど、「本歌取り」では美味しい標的だったりします」
  • 「「誰でもメディア」時代は、マジョリティの知覚において不可視のまま越境するステルス(隠密)型メディアの勃興期でもあるのです」
  • 「これからは横のトライブ同士が互いに連携していくという新しいグローバル展開の予感がします」

CGM

  • 「「地球の歩き方」は紙の時代かあすでにCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)だったわけですね」
  • 「一概に現行メディアの価値が下がると考えるのは早計で、実はCGMと組み合わせると、かなりの収益増大につながると、わたしはかねてより主張し(後略)」
  • 「CGMを否定するわけではありませんが、たとえば、その製品についてあまり明るくないときに、やたらと仔細に詳しい常駐マニアの方が「あれがいい、これのここがダメ」と述べて丁々発止しているのは、初心者には参考にしづらいということでしょうか」

雑誌・新聞(フロー) vs. 書籍(ストック)

  • 「書籍は(特に有体物としてのそれは)、その冗長さゆえメディア・コンバージェンス(収束・融合)の流れから独立して存在することが可能な、完結したメディアという気がします」
  • 「新聞は限りなく「雑誌」的なるものに、雑誌は「新聞」的なものへと、ますます近接していくかと思われます」
  • 「電子媒体だからフローが高いというわけではなく、行動属性にあわせて、メディアはその情報特性も変えていくように推移していくのではないか、とわたしは考えています」

「編集」とは流通経路に関係ない

  • 「もちろん、本書をここまで我慢しながらお読みいただいた皆さんには、わたしが雑誌という言葉を使ったとしても、それが雑誌コードを取次会社から取得し、全国のコンビニや書店で販売される紙のアレを指すだけの狭義な意味でないことはご理解いただけるかと思います」
  • 「雑誌と出版を狭義な意味で語り、さらに「放送」と「配信」というプロトコル(通信手段)に区別することは、メディアの未来を見渡すときに、視野狭窄に陥る可能性があり、メディア企業の可能性を狭める可能性がある、と思ったから、「出版」という言葉を広義に解釈している次第です」
  • 「情報の価値が必ずしも有料視聴や購読、または広告出稿で賄われるわけではありません。(中略)「出版」とは、換金手段のことではないと考えます」
  • 「多くの日本の出版社は、前述したように、「ディストリビューション(流通)オリエンテッド」であり、デジタル化については、ディストリビューション・チャンネルが増えた程度の認識であることが多々あります」

これからの「編集」

  • 「情報商社、それでいいじゃないですか」
  • 「まさに編集という行為は、情報のハブ(データの集約・中継装置)づくりです」
  • 「ウェブ上では、取次に任しておけば本が並ぶというわけではないのです。すべて自力で、マーケティングからプロモーション、はてはビジネスまで編み出す必要があるのです。だから、ネット上でメディアビジネスを行うということは、自然と全部やることになるのです」
  • 「(1)ウェブ上での人の流れや動きを直感し、情報を整理して提示する編集者としてのスキルを有する、(2)システムについての理解をもち、なおかつUI(ユーザー・インターフェイス)やデザインについて明快なビジョンと理解を持つ、(3)換金化のためのビジネススキームまでを立案できる……というスキルセット」

編集者魂

  • 「編集とはその対象と分かち合う相手への「愛」。そして、技術や見た目へのオタクなまでの情熱やこだわりを指すのかもしれません」
  • 「「粗雑品」だから最低だと同定する前に、最高の原石を仕込むことこそ、編集者の仕事だと思いますし、「最低」なものが集まらないよう、どういったエコシステムを構築するのかが腕のふるいどころではないでしょうか」
  • 「全員が本気のプロを目指すにしても、競争過多ですから、「ただそこに身を置いていれば食える」という時代はもう終わりでしょう。メディアは、まさにそういう時代に突入しているのではないでしょうか」
  • 「わたしが出版を通じて学んだ「編集力」は、入稿までのスキルのみならず、サービスや商品、ブランドのプロデュース力でもあり、未開の分野を開拓する能力や人を動かす力でもあり、交渉、仕切りや進行、予算管理、資金集め、パッケージング、ひいては不可能だと言われていることを可能にする、ビジネススクールでは学べない特殊な才覚を発揮できる職能だと信じています」
  • 「わたしたちプロには「アティチュード」が必要だと思います。(中略)「ロック・スピリット」があるように「メディア・スピリット」もあると思います」

ネットメディアと既存メディアのそれぞれ弱点

  • 「「ロングテール理論」の美しい誤解への反論でもあるのですが、実は資本力・ブランド名のない個人が出る幕は「トルソー」(真ん中の胴体)にしかないと。もちろんテールには個人が連なりますが、そこから収益を上げるのは前述した”規模のビジネス”が行える一部企業です。ショートヘッドは言うまでもありません」
  • 「既存マスメディアの方法論は、先にコストありきとなりますので、一定規模の収益を確保できなければ存続できません」
  • 「電子コンテンツの難しい点は、フローが高まることで、価値の逓減も早くなるということです」
  • 「ネット上には映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の虫みたいに、次から次へとコピーが出てくるので、その点でもマイナスサム・ゲームを誘発しかねません」

その他

  • 「「誰でもメディア」が示唆すべき教訓のひとつは、「他人(特に出版社)の進化を奪え」です」
  • 「ネット上のサービスは、先行者有利といわれますが、検索エンジンのグーグルも、急速に成長しつつあるSNSのfacebookもそれぞれの分野では後発です」
  • 「ブログでメディア・ビジネスを行うには、ビジネスモデルが不可欠であり、コンテンツだけ用意すれば「オシマイ」というほど甘いものではありません」
  • 「業界的にトレンドではなくなった頃、レイトマジョリティーへのビジネスが見込めるのかもしれませんね」
  • 「アマチュアも含む「誰でもメディア」が立ち位置を明確にするために「引用」せざるをえない「発行」元として、マスメディア(というか、ブロードキャスト)の需要はなくならないと考えています」
  • 「参入障壁の低さは競合者の多さを物語ります。よって、ネットに対応できたからといって、かつての組織規模を維持できるわけではありません」
  • 「(ビデオキャストは)テキストのブログよりも参入障壁は高く、ここはまだ多才な個人か、すでに定額で発生するコストをペイできる力をもった映像制作会社に委ねられた領域のような気がします」
  • 「企業の広告に頼るメディアこそ、ユーザーから検索されてナンボ、と言えます」
  • 「日本の新聞の場合、わたしは記者の顔が見えないのはいかがなものかと常々思っています」

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