「ローバー、火星を駆ける」
早川書房
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火星に無人探査車「スピリッツ」と「オポチュニティ」を送り込み、水の痕跡を発見するまでのドラマを、プロジェクトリーダーの科学者自らが記したドキュメント。
いやー、天が二物を与えたというのか。プロジェクトの内容や現場に詳しいのは当然として、次々と襲いかかる試練や挫折と、それを乗り越えていく様子を、ドラマチックかつ軽やかに描写していて、わくわくする。内容も、ディテールまで具体的に描いているだけど、一般読者でもわかる範囲で説明するというバランスでまとめていて、読み込まされるし、知識も得られる。登場人物も、ちゃんと個性ある人間として描かれているし。
第1部は、NASAの公募にプロジェクトを応募しては落選することの繰り返し。ライバル科学者との競争や仲間入り、科学者と技術者との対立や連帯。宇宙探査をめぐる世の中の変化。そうして十数年かけてようやく採択に至る。
第2部は、NASAのプロジェクトとして無人探査車を作り目的にあうように完成させ、打ち上げるまでの話。重量と予算の制約から泣く泣く装置する装置を絞ったり。大規模プロジェクト特有の、1箇所ではかすかな間違い可能性が積み重なることにより、しじゅう意図しない動作や故障、組立ミスに悩まされたり。そして、各組織の文化の違いや、なにより偉い人の説得と調整に苦労した様子が描かれる。
第3部は、無人探査車を火星上で走らせ、水の痕跡を探す話。ここでも、機材の不調や故障に悩まされつつ、でもラッキーもありつつ、探査が進められる。地上でも火星時間に合わせたシフトを組み、ほぼリアルタイムでモニターしながら操作を進める。そして、発見に至る。
苦労続きなんだけど、一人称が「僕」なせいもあって、どこか口笛を吹きながら挑んでいるように見えるのが「プロジェクトX」とは違うところ。しかし、スピリッツが着地した地点にある岩の名前が「サシミ」と「ワサビ」ってのは、どういうセンスなんだろう(笑)
ちなみに、本書で知った本筋とは関係ない小ネタ。アメリカでは一部地域以外では花火が法律で禁止されているそうな。
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