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「ジャガイモの世界史」

ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書 1930)
伊藤 章治
中央公論新社
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 アイルランドからアメリカに大量に移民したのは、ジャガイモ飢饉が原因だった。その結果、ジャガイモへの偏見のないアメリカは軍隊を増強し、独立戦争の戦力で有利になった。

 というように、ジャガイモが「貧者のパン」として世界の歴史に与えた影響を解説する本。たとえば、ヨーロッパにジャガイモを普及させたのは、フリードリッヒ大王やピョートル大帝といった、国力増大をはかる絶対君主だった、など。ちなみに、今年は国際ジャガイモ年。

 ただし、著者は、ジャガイモや世界史より、そこで苦労した人々の物語のほうに重点を置いているようで、ジャガイモと関連性の少ないエピソードもいくつか。

 以下、本書からのメモ。

  • 1991年、保守派によるロシアのクーデター事件
    • 「ジャガイモが豊作なので、市民は収穫に忙しいはずだ」という読み
      • 実際にはジャガイモより民主化だった
    • もともと、政界やアナリストが「今年のジャガイモの収穫量」から民衆の不満度を読んでいた
  • 足尾鉱毒事件とジャガイモ
    • 田畑を汚染された被害民が北海道常呂郡に移住してジャガイモを栽培
  • 北海道へのジャガイモ
    • 1706年、末兵衛
    • 1882年ごろ、湯地定基
      • 乃木将軍夫人の兄
      • 食料不足により、ジャガイモを普及させる
      • 「芋判官」
  • ジャガイモのふるさと
    • ペルーとボリビアの国境付近、ティティカカ湖のほとりあたり
      • 野生種のジャガイモ
      • 浮島の上にもジャガイモ畑
    • 二倍体のジャガイモの栽培→四倍体のジャガイモの誕生
    • 乾燥イモ「チューニョ」
      • 10年近く保存できる、交易品としても重宝
      • レンコンに似たしゃきしゃき感
    • かつてのインカ帝国を支えた食物はジャガイモ?
  • ヨーロッパへの伝搬
    • スペイン人が持ち帰ったのは1570年ごろ
    • そこから英国へは16世紀なかばから末
      • ジャガイモを積んだスペインの船がアイルランド沿岸で座礁したことから、との説
    • ドイツでは1588年には植物園に、一般での栽培は30年戦争の後
    • フランスへ入ったのは16世紀末、一般での栽培は18世紀
    • 日本へは16世紀末にオランダ人の手でジャガタラから
  • ジャガイモの呼び名
    • papa(中南米)系
      • patata(スペイン、イタリア)、potato(英語)、potatis(スウェーデン)
    • 「大地のリンゴ」
      • pomme de terre(仏)、aardappel(蘭)、Erdapfel(独)
    • トリュフ系
      • Kartoffel(独)、kartofel(露)
    • 日本
      • ジャガイモ、ジャガタライモ系
      • 馬鈴薯系
      • アップライモ系
        • オランダ語由来?
      • 収穫形態由来
        • ニドイモ(二度)、ゴトイモ(五斗)、ゴショーイモ(五升)
      • 人名・地名由来
        • セーダイモ(中井清太夫)、ゴーシューイモ(江州)、シナノイモ(信濃)
        • 善太芋、お助け芋:1700年代、飛騨にジャガイモを広めた代官、幸田善太夫
          • 天保飢饉で役に立った
  • 30年戦争(1618~1648)
    • ドイツ全土が荒廃
    • ドイツ西部地方でジャガイモの栽培が始まる
    • フリードリッヒ2世「ジャガイモ令」(1756)
      • 無料で種イモを配り、掘り起こさないよう兵士が監視
  • 7年戦争(1756~1763)
    • ドイツはジャガイモで兵糧が確かになる
    • スウェーデン軍の戦果はジャガイモだけ
    • フランス、パルマンティエによるジャガイモ普及
      • プロイセン軍の捕虜になり、毎日ジャガイモを食べる
      • 帰国後、フランスアカデミーの「食料飢饉を緩和する食物」募集に論文提出、採用
      • 柵で囲い警備兵に守られた畑(マリー・アントワネットが土地を提供)に、人々の興味が集まる
        • 夜間は警備を緩め、盗ませたジャガイモが評判になり、栽培が広まる
      • のちに、ナポレオンもパルマンティエのプロジェクトを援助
        • 生産量が約15倍に急上昇
  • バイエルン継承戦争(1778~1779)
    • 「ジャガイモ戦争」
      • プロイセンとオーストリアが互いのジャガイモ畑を荒らすことを重要戦略とした
  • 小氷期による飢饉
    • イギリスでジャガイモの栽培に助成金
      • 1795年以降、ジャガイモが食卓に上るようになる
    • オランダで1739年にジャガイモの作付けがはじまる
  • アイルランド
    • 16世紀末にジャガイモがもたらされた
      • ヨーロッパで最初に主食にした
        • 収穫した麦はみな英国人地主に納め、自分たちはジャガイモを食べた
      • 大幅な人口増加
    • ジャガイモ飢饉(1845~)
      • 「黒死病以来、ヨーロッパで最大の惨事」
      • ジャガイモ単作(モノカルチャー)が原因
      • 250万人がいなくなる
        • 100万人が(アメリカに)移民、残りが死亡
      • アメリカにジャガイモが渡る
        • ジョージ・ワシントン、ジョン・アダムズ、トマス・ジェファーソンも推進
        • 独立時、イギリスと比べてジャガイモの偏見もなく、軍隊でも食べられていた
    • 文学とジャガイモの街
      • 「小妖精が横断中」の交通標識
  • ロシア
    • ピョートル大帝がおしのびでオランダで職工をしていた時代に、ジャガイモを知り本国に栽培を命じたことから始まったという説
      • 7年戦争で兵士がプロイセンから持ち帰ってから、とする説も
    • なかなか広まらなかった
      • ピョートル大帝が農民に「目の前で食ってみせなければ打ち首にする」と脅したという伝説
    • 1840年、一定量のジャガイモを作付けするよう命じる法令
      • 反対運動の一揆
      • 1843年、説得による普及に切り替え、成功
    • 1825年、デカブリスト(十二月党員)の蜂起、あっさり失敗
      • シベリアに流刑になった貴族たちがジャガイモの栽培を始める
      • 「ジャガイモ革命」
  • 当初ヨーロッパで迷信
    • 「ジャガイモを食べると流行病にかかる」
    • 「催淫作用がある」
    • 「禁断の木の実」
    • 「聖書にない食物であり、神に背く」
  • 森の変容
    • 中世には豚は森で放し飼いにされていた
      • どんぐりを生む広葉樹が必要
    • じゃがいもを豚の餌にするようになったため、広葉樹を切り倒したり、針葉樹を植えたりできるようになった
  • 産業革命
    • エンゲルス「イギリスにおける労働者階級の状態」(1845年)
      • 貧民街などを取材、膨大な資料を収集し分析
      • 貧しい労働者を支える食料:ジャガイモ
      • この状態を脱するようになったのは1850~1860年ごろと言われる
    • アダム・スミスも「小麦粉の3倍の生産量」とジャガイモを評価
    • 日本:女工哀史
      • 馬鈴薯汁
      • 大原孫三郎の労働環境改善運動
  • 現代のドイツ
    • 第二次大戦後の一時期、ベルリン最大の公園ティアガルティンがジャガイモ畑に
    • 子供が土に触れる機会として市民農園でジャガイモを栽培
  • 現代のロシア
    • 潜在的だったインフレ傾向が市場化により顕在化
      • 1年で物価が26倍に
    • ダーチャ(別荘)でジャガイモを栽培してしのぐ市民
  • チェ・ゲバラの終焉の地はジャガイモ畑
  • アンネ・フランクの日記
    • ジャガイモの入手具合が生活具合のバロメーターとして描かれている
  • 長崎
    • 北海道に次ぐジャガイモの生産県
      • 北海道は一期作、秋作は長崎の独壇場
    • 1950年、長崎県総合農林試験場愛野馬鈴薯支場
      • 暖地にあった品種の開発
  • 種イモの生産
    • 日本では独立行政法人種苗管理センターが厳重に管理
  • 長野県下栗地区
    • 天国にいちばん近い畑
    • ニドイモ(二度芋)というジャガイモ
      • 江戸時代に日本に入ってきた在来種
      • 現在、全国で作られている種はアメリカから北海道経由で広まった
  • 昭和初期の飢饉で、盛岡ではジャガイモが救いにならなかった
    • 気象的に種イモの保存が効かない
    • 歌人、西塔幸子の短歌
    • 帝国軍隊の兵士の供給地帯の状況に、青年将校たちが危機感
      • 五・一五事件や二・二六事件のきっかけのひとつに
  • 満豪開拓団
    • 凶作の東北から多くの農民が渡った
    • ジャガイモは北海道から取り寄せた男爵イモを栽培
    • 戦後、那須に集まったグループ
      • 種イモの栽培
  • シベリア抑留
    • 第二次大戦で2000万人の死者を出したソ連が捕虜を労働力に
    • コルホーズのジャガイモ
  • 北海道の保存食「凍みイモ」
    • チューニョに似た製法
  • 北海道の瀬棚郡今金町:「日本一おいしいジャガイモの町」
    • 明治時代、キリスト教徒の学生らにより開墾
    • 政府公認の女医第1号、荻野吟子
    • 男爵イモに絞って栽培
  • 男爵イモ
    • 川田龍吉男爵が輸入
    • アイリッシュ・コブラー種
    • 北海道の気候によく合い、ひろまる
  • 屋上緑化でイモ栽培

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