「のぼうの城」
この男、果たして賢か愚か…
痛快歴史エンターテイメント小説。いまけっこう売れてるらしいのだけど、読んでみたら本当にべらぼうに面白かった。
時代は本能寺の変の8年後。秀吉が北条家の関東を制圧している中、ただ1つだけ、秀吉軍の攻撃から守り抜いた城「忍城」があった。しかも、石田三成や大谷吉継が率いる精鋭部隊2万に対し、主力部隊が小田原城に行った残りの武士+ほとんどが農民で構成されるたった2千。そりゃ「墨攻」かよと思うけど、史実が元になっているそうだ。
この戦を率いたのが、「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれる、智も仁も勇もない、デブでブサイクな総大将、成田長親。この裸の大将のような男を主人公に、親友で猛将の正木丹波と、敵の大将の石田三成の視点を中心に、合戦を描く。
とにかく人物造詣がいい。魅力的な主人公を、あえて内面を描かずに最後まで謎のままとし、丹波や三成の目からその計り知れなさ・つかみどころのなさを描いている。また、上杉謙信への憧れから努力で武と智を兼ね備えた武将となった丹波、そのライバルで乱暴者ながら実はこっそり女子供にやさしい憎めないキャラの和泉、ひ弱さのコンプレックスをバネに兵法を猛勉強した自称天才のナマイキ若侍キャラの靱負という、「蒼天航路」でいえば劉備・関羽・張飛・孔明みたいなキャラが印象的だ。ほかにも、甲斐姫やら、かぞうやら、明嶺やら、はては敵役の三成まで、とにかく登場人物のキャラが立ちまくっている。
もちろん、合戦のシーンもぐいぐい読ませる。丹波もカッコよくキメてるし。
なんというか、武将に学ぶビジネス術とかそういう戦国ものにありがちな抹香臭いことは抜きにして、面白い小説を読みたい人におすすめ。
ちなみに同じ戦を描いた小説に山田風太郎「風来忍法帖」がある。戦の内容は違うけど、農民ががんばっているところは共通しているなぁ。忍法帖シリーズでも飛び抜けて能天気なタッチの異色作だけど、これもめっぽう面白い小説。そういえばこちらもダメ人間っぽいオフビート感覚が面白い話だ。
風来忍法帖―山田風太郎忍法帖〈11〉 (講談社文庫)
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