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「戦争の経済学」

戦争の経済学
戦争の経済学
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ポール・ポースト 山形浩生
バジリコ (2007/10/30)
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 「戦争は経済に貢献するか」にはじまり、戦争や軍隊、紛争にまつわるいくつかのテーマを、経済学の観点から分析する書籍。

 大学の教科書形式で書かれていて、ケーススタディや復習問題もついている。手法や語り口もオーソドックス。論理がやや粗い部分も含めて、各自で考察するときの土台として使うのがよいのではなかろうか。訳者によると米軍の士官学校やクウェート大などで採用されているのだとか。

 以下、本書で書かれている内容を、自分で考察する前にメモ。

戦争の経済効果

  • 軍事で政府が消費や雇用を増やすという考え(軍事ケインズ主義)
    • ただし、インフレを起こす(生産能力が不足、材料不測)
      • 予想できれば対応できるが、予想外だとマイナス影響
  • 戦争の場所
    • 輸入元での戦争は経済に打撃
      • 石油価格が10ドル上がるとアメリカの実質GDP成長率は平均約0.5%下がる
    • 輸出先での戦争は経済にプラスになる場合がある
      • 第1・2次世界大戦のアメリカ
  • 資金調達のために貨幣供給を増やすことが多い→インフレ
  • 物理リソースの動員
    • 遊休生産能力が多い場合であれば経済に有利
    • ただし、民間財を生産しない機会損失も
  • 労働リソースの動員
    • 20世紀の戦争では、失業率の下がり具合が小さい
    • 動員により人的資本を経済から取り除いてしまう分配の非効率
    • 軍人の人口比は戦争ごとに下がっている
  • 戦争が米国経済にポジティブに影響した例
    • 第1次大戦
      • 連邦準備制度
      • ナポレオン戦争でのイギリスに類似
    • 第2次大戦
      • 通貨供給と国債とが相殺して金利を下げる
      • 中央計画経済化
      • 戦後はインフレ
    • 朝鮮戦争
      • 増税に頼る:軍事行動が短期間だった
      • インフレ
  • 戦争が米国経済にネガティブに影響した例
    • ベトナム戦争
      • 負債のマネタイズ
      • 国債が買われた分、民間貸付の金が減って高金利に(クラウディングアウト効果)
      • ペロポネソス戦争でのアテナイに類似
    • 湾岸戦争
      • 失業率上昇
    • イラク戦争
      • 失業率上昇
      • 原油価格上昇
      • コストは減少:技術向上、武器が安価に、民生技術の転用、人員動員の低下
      • ワシントンDCや軍需産業では新規雇用
        • ただし株価は上がらなかった

軍隊

  • アメリカは世界の軍事支出の38%を占める
    • ただし、GDP比では冷戦時代の半分以下
  • 軍産複合体(MIC)は、戦時の支出を平時に均すために作られた
    • 第2次大戦時に軍事生産や政府のポストが劇的に増えた
  • 軍縮と軍拡
    • 基地の閉鎖は地域コミュニティの経済に深刻な影響を与えない
    • 軍事支出と民間支出に負の相関
    • 軍拡競争(安全保障のジレンマ)
      • ソ連は軍事生産に手いっぱいで民間部門に回らなくなった(PPF)
  • 人員
    • 徴兵軍は、同じ予算で多くの兵員を雇えるが、経済の機会費用(損失)は高い
    • アメリカはベトナム戦争のあと総志願軍(AVF)に移行
    • 民間軍事会社(PMC)・民営軍(PMF)は過去10年ですさまじい成長
      • イラク戦争では米軍人10人あたり民間業者1人
      • 米軍のダウンサイジング、兵器の複雑化、安くて有能(賃金が高い)
      • 政府軍からの引き抜きのため、政府の投資損失と再リクルート費用がある→公共財
  • 兵器市場(米国内の)は相互独占市場
    • 買い手は政府しかいない、寡占市場、価格が重要ではない、契約が決まれば独占、機密保持のために政府の保護と介入が大きい
    • 軍事産業の上位10社はほとんど軍事部門の売上が1/4未満、下位10社はほとんど60%以上
    • 米国防省の契約形態:固定費契約、コストプラス契約、インセンティブ契約
    • デッドウェイト・ロス:インセンティブを越えた金額での契約
      • 生産による便益、相互独占による総生産の縮小、技術の民間への還元(正の外部性)もある
  • 米国の兵器輸出:世界でもっとも広く取引されているF-16で検証
    • 政府間取引:外国軍事販売(FMS)
    • 外国政府-企業取引:直接商業販売(DCS)
      • 輸出免許
      • 相殺協定:購入国に一部技術提供や製造を認めて価格を相殺

安全保障

  • 貿易は戦争を減らすか
    • 金のアーチ理論:マクドナルドが開店した国どうしはれ以降戦争しないという説
    • 貿易は戦争の費用を高くする
    • 反論:戦争が少ないから貿易が増えているだけ
  • 内戦の原因
    • 民族や宗教の対立より、経済要因
    • 貧困、資源採掘、強欲、少数民族からの搾取、格差
    • GDPの相当部分が原材料の輸出からなる国は、紛争リスクが高い
    • 最大の民族集団が45~90%を構成しているとき紛争が起こる確率が28%に上がるとの説
    • 垂直格差は紛争につながらないが、垂直格差(民族、宗教、政治などの格差)は紛争の危険を増す
  • 平和維持活動は経済面では非効率
    • フリーライダー問題、限界便益を上回る限界費用
  • パレスチナの自爆テロリストの57%は高校以上の教育を受けている
  • テロの動機をゲームツリーで分析
  • ハワラ、飛銭
  • テロの経済的影響:国際貿易
  • 生物兵器はコストは低いが扱いが難しい
  • 核拡散
    • 核兵器は固定費は高いが限界費用や効果あたり費用は低い
    • たとえば、パキスタンが高濃縮ウラン(HEU)を、北朝鮮がミサイルを開発するといった国際分業をした場合、効率が高い
    • 闇市場価格報告事例:兵器純度のプルトニウム4kgに2.5~2.65億ドル
    • 条約や協定は有効性があるか
      • 経済学理論では協調行動になりにくい:遵守コスト、フリーライダー問題、覇権国不在

日本の戦争をプロジェクトとして収支計算(訳者付録)

  • 日清戦争
    • 収益率(賠償金÷費用-1):57.7%
    • 期待収益率:勝率80%で計算して5%
  • 現在価値:戦争が長期化すると割引率が重なり、正味現在価値(NPV)が小さくなる
  • イラク派兵
    • インフラ整備などの公共事業に見立てて割引率4%で計算:年65億円で元がとれる?
  • 現代の戦争はこれらのモデルで考えるには数値化困難な要素が多すぎる

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