本を読む

読書やコンピュータなどに関するメモ

「「超小型」出版」「ルポ 電子書籍大国アメリカ」

 電子書籍論関連で対照的な立ち位置の本を続けて読んだ。どちらも興味深かったけど、いずれも読む人を選びそう。

「超小型」出版:シンプルなツールとシステムを電子出版に
プレ/ポスト (2013-01-10)
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 「「超小型」出版」は、日本在住8年の経験を持つ米国人による電子書籍論。というかFlipboardの元プロダクトデザイナーの人。

 ノリとしては、30分ぐらいで読める、ゆる目のエッセイっぽい感じ。N360かわいい。

 テーマは、既存の出版の前提を取っ払った電子書籍のビジョンである“「超小型」出版”。要件として挙げられているのは、「小さな発行サイズ」「小さなファイルサイズ」「適正な購読料」「流動的な発行スケジュール」「スクロール(今のところ)」「明快なナビゲーション」「HTMLベース」「開かれたWeb」。

 私も電子書籍のキラー領域はKindle Singleみたいな路線かなと思っているので(もちろんそれ以外も重要だという前提で)、いろいろ考えながら読んだ。ただ、ここまで行くと、ブログでいいのではという気もしてくるのも確か。2010年に、「電子書籍は、Webを旧来のビジネスモデルに乗せる仕組みにすぎないのでは?」という問題提起があったのを思い出した。

 そんなこんなもひっくるめて、自分が日頃考えていることの触媒として面白く読んだ。一方、電子書籍全般について勉強しようという人だと、物足りなく感じるかも。

ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)
大原 ケイ
アスキー・メディアワークス
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 「ルポ 電子書籍大国アメリカ」は、米国在住の出版エージェントの人による本。

 2010年の本なのと、著者の立ち位置が「電子書籍はフォーマットの一つにすぎない」というものなのとで、米国での電子書籍最新事情という感じではない。

 ただ、米国内の既存の(主に紙の)出版業界や書店業界などについて、出版エージェントの目から見た姿が紹介されているのが特徴。そうしたテーマについて興味のある人には、面白いと思う。

「Lisp Meet Up presented by Shibuya.lisp #1」参加

 「Lisp Meet Up presented by Shibuya.lisp #1」に参加してきました。

 会場の扉を開けると、いきなり木が部屋中にのたくってて、びっくり。

Lisp Meet Up presented by Shibuya.lisp #1会場

 chikuさんの挨拶(「飲み屋で隣の人がたまたまLisperだった」「Lispをネタにダベる場に」)のあと、chikuさんの「vim as a Lisp frontend」の発表。slimeのようなことをvimでやる話で、(1)自前のvim scriptでインタプリタに食わせる(プログラムがコンパイラとかの大きいのだとなかなか帰ってこない)、(2)slime.vim(screen -X stuffでインタプリタに食わせる)、(3)slimev(vim scriptとPythonで書かれたswankクライアント。これがおすすめらしい)、(4)limp(更新が止まっている)、の4つが紹介されました。

 そのまま、CL処理系や開発環境のインストールや、それにまつわったりまつわらなかったりする雑談に。MacだとClozure CL(CCL)がAppStoreからインストールできるというのは、場が湧きましたね。いくつかの輪ができて、インストールとか、おなじみのdo vs. loop談義とか、湯浅研談義とか、Clojure(「j」のほう)談義でLeiningen 2がどうとか、それぞれ盛り上がってました。

「僕がアップルで学んだこと」

僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば人が変わる、組織が変わる (アスキー新書)
松井博
アスキー・メディアワークス
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 AppleのScott Forstall氏がiOS6の地図問題で失脚したときに、本書への言及を見かけて気になっていたけど、ようやく読んだ。

 本書は、Appleの社風について、元Appleの中の人が書いている本。テーマとしては、そうした経験を経て得られた仕事術、ということなのだけど、それ以上にその社風そのものに興味を持って読んだ。まさに、「猛禽文化」

 本書から猛禽文化っぽい記述をメモ。

  • アップルの管理職として社内政治を経験すると、ほかの会社(グーグル等)はお遊戯のように思える
  • 「お前はこのグループの独裁者になるんだぞ」と言われた
    • 上司からの命令は絶対で、「右向け右」と言われたら右を向かないと辞めさせられる
  • 立ち回りのうまい者は何の躊躇もなく問題を他部署の責任に仕立てたり、他部署の手柄を自分の手柄にしたりする
  • 「尻拭い」を一度でもするとつけこまれるし、無駄な仕事を断れない奴と評価される
  • 社内で、各部署が何をやっているかや、誰がキーパーソンなのか、誰が何に影響力を持っているのか、情報を収集しておく
  • 自分や部署の業績をメールやWebなどを使って社内で宣伝する
  • シリコンバレーでも屈指の労働時間の長い会社
  • 売り上げの2.3%しか研究開発に投資していない
  • 大した学歴がなくてクレイジーな人が社内で相対的に減ってきている

 軟弱者の自分にはとても勤まりそうもないけど、こういう社風によってAppleの端正な製品が作られているのだなと思った。

「できるPRO Apache Webサーバー 改訂版 Version 2.4/2.2/2.0対応」

 編集のお手伝いをした書籍が発売になるので、宣伝します。

できるPRO Apache Webサーバー 改訂版 Version 2.4/2.2/2.0対応
辻 秀典 渡辺 高志 鈴木 幸敏 できるシリーズ編集部
インプレスジャパン
売り上げランキング: 21,812

 Apache Webサーバー(Apache httpd)の入門書です。Apache httpdを自分で設定したことがなかったり、設定してるけどコピペして済ませている部分があったりというぐらいの人を対象にしています。

 よくわかないけどコピペでそれっぽく動いた、というだけにならないように、やりたいこと→そのための設定項目という見せ方で、さらに設定する前と設定した後をハンズオンで試しながら確認できるように、なるべく工夫したつもりです。

 そのかわり、「これだけのアクセスをこの構成や設定でさばく」 といったような、中〜上級者向けのネタは対象外となっています。あと、Linuxのインストール方法や、操作の基礎、Webアプリの書き方なども、基本的には対象外です。

 元は2006年に出た本の改訂です。当時はApache httpd 2.0と1.3をメインに、出てまもない2.2もケア、という対象バージョンでした。それに対し、今回は、Apache httpd 2.2をメインに、2.0と、出てまもない2.4もケア、という対象バージョンになっています。

 あと、前版ではシチュエーションを単純化するためにApache httpdをソースから入れる場合としてストーリーを作っていました。それに対し、今回は、「CentOSでパッケージから」「Ubuntu Serverでパッケージから」「ソースからApache httpd 2.2」「ソースからApache httpd 2.0」「ソースからApache httpd 2.4」「Windowsで公式バイナリ」「MacでOS付属のApache httpd」のそれぞれの場合に分けて解説しています。

 正直、本を作る側として、環境ごとに分けて対応するのには苦労しましたが、より実際的な形で実習できるようになっているのではないかと思います。いやほんと、Apache httpd 2.4は大きく変わっていますね。

 というわけで、Apache httpdの初学者や初級者の方に、一度手にとっていただければ幸いです。

「日経Linux」2013年2月号

 特集2「必携レスキューLinux活用」の執筆に参加したのでご報告と宣伝。私は、ファイルマネージャ(PCManFM)でのファイルコピーと、grub-installと、lvm2という、ごく簡単な3件を担当しました。自分のところはさておき、特集全体は、LubuntuベースのオリジナルLive USBメモリで、削除したファイルや壊れたパーティションを復旧したりするアプリを使う話。

 この号で目立っているのが、Maker系の特集1。Part 1〜2こそLinuxディストリビューションのカスタマイズなんだけど、Part 3でいきなりLinuxからKISSlicerで3Dプリンタを制御してフィギュアを作る話。Part 4がAndroidの音声認識機能とADKによるLチカ(LEDチカチカ)を組み合わせて、言葉に反応するドロイド君ぬいぐるみを作る話。Part 5がルンバにノートPCを乗せてシリアル経由でOpenRTM-aistから制御する話。Part 6が、Webブラウザ上のJavaScriptからmbedボードと通信するMiMicライブラリを使って、ブラウザゲームでスティックコントローラを使う話。

 そっち系では新連載「よくわかるAndroid NDKのディープな話」が登場。Androidでネイティブコードを動かすためのNDKについての解説で、第1回はプロジェクト構成などのNDKの特徴概要など。一方、Titanium Mobileでのハイブリッドアプリ開発連載が最終回で、カードゲーム「ドロイドクエスト」完成。

 新連載としてはほか、中井悦司氏の「絶対わかるLinuxサーバーの基礎原理」も登場。Amazon AWSを使い、Linuxの仕組みとトラブルパターンを、会話形式のハンズオンで実習しながら解説していくようだ。今回は、timeやvmstat、dstatなどを使って、マルチコアでのコア使用率の偏りを見る話。

 サーバー管理系ではほかに、特別企画がCloudStackのgetting started的な解説。仮想アプライアンスもあるらしい。PaaS連載は、JavaのPaaS「CloudBase」。LPIC連載が、SQLの等結合と、ファイルサーバーのネットワーク設定のトラブルとその確認。

 特集3が、コマンドラインでよくやるような操作について、対応するGUIツールを紹介するもの。ビギナー系ではほか、新連載で「ホントに初めてのLinux超入門」。今回は「Linuxって何?」ということで、「Linuxって何なんですか?」「Windowsとどう違うのですか?」「ディストリビューションとは何ですか?」など。

 旧型PC+ディストリビューション連載がリニューアルして、今回は中古PCにUSB 3.0カードを増設してUbuntu Serverでファイルサーバー化する話。

 ほか、巻頭のレポート記事でFedora 18の紹介。OSS開発者インタビューが、Google日本語入力/Mozcの小松弘幸氏・工藤拓氏。特選フリーソフトがComodo Antivirus for Linux。美女Linux連載が/etc/network/interfacesやifconfigのあたり。カーネル機能連載がswappinessで、一時期のバージョンでは0にしても0相当の動作にならなかったという話も。mruby連載が、テストフレームワークの話と、バイナリ形式のCプログラムへの組み込み。

 毎度おなじみマンガ「#!シス管系女子」は、ログのテキスト処理でのcutコマンド。マンガというだけでなく、ビジュアル的に説明が工夫されていると思う。そうそう、付属DVD-ROMに「みんとちゃん壁紙」が収録。

「ガレー船物語」

ガレー船物語―地中海を制した人力船発達史 (光人社NF文庫)
大内 建二
潮書房光人社
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 ガレー船の歴史だけで1冊になってるんだ、と書店の店頭で去年手にとり、買って読んでみた本。版元は雑誌「丸」の会社の書籍分野の子会社。

 古代エジプトの船から、レバノン杉とフェニキア人の造船・航海技術での発展、ギリシャ時代を経て、16世紀の大砲の発達によって大型帆船に取ってかわられるまでを解説。特に、ギリシャ軍船としてのガレー船とその戦法、実際の海戦の分析とかがじっくり書き込まれている。あと、フランスのガレー式大型商船と漕ぎ手の確保のための徒刑囚の徴用とか、ガレー船とバイキング船の構造の比較とか。

 資料をもとに、縦に横にガレー船を解説しているのだけど、縦の話のところと横の話のところとで同じ話が繰り返されたりするのはご愛嬌。まあ正直、ガレー船が好きな人と、ちょっと変わった本に興味がある人(自分は後者)だけ読む本だと思う。

「WEB+DB PRESS」vol.72

WEB+DB PRESS Vol.72
WEB+DB PRESS Vol.72
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近藤 宇智朗 生井 智司 久保 達彦 道井 俊介 飯田 祐基 中村 知成 規世 やよい 後藤 秀宣 天野 祐介 奥野 幹也 Dr.Kein tokuhirom 森田 創 中島 聡 堤 智代 A-Listers はまちや2 竹原 川添 貴生
技術評論社
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 年始に通読したのでメモ。

 特集1は、「コードレビュー実践入門」で、コードレビューとは何かから、新人を想定して始める心得、ツールなどを紹介している。特に、対話形式のストーリーで実際を詳解するパートが、ユーモアをまじえつつ具体的なシチュエーションを見せていてわかりやすい。

 同じudzura氏によるRuby連載は「Rack再入門」。また、Perl連載がtokuhirom氏によるAmon2の紹介。このへん、並行して「Plack Handbook」を読んでいたので、相互に理解が進んだ。

Plack Handbook
Plack Handbook
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(2012-10-29)
売り上げランキング: 4,235

 特集2が「[詳解]nginx」。nginxの概要から、インストールや基本設定、静的サーバー、UnicornやPHP-FPMとの接続、ロードバランシング、拡張モジュール作成の基礎まで解説している。

 特集3ば「Backlog・Cacoo開発ノウハウ大公開」と題して、ヌーラボの開発体制の事例を詳解。プロジェクロ管理ツールBacklogを自分たちで使っているところや、作図ツールCacooのユーザーの要望を反映するところの話なども。あと、UI変更をChromeのExtensionでプロトタイプするという話があって、そういう方法もあるのかと。

 特別企画でXP再入門。「XP入門」の初版と第2版との違いを軸に、著者の気付きや試みなどをまじえて解説している。

 森田創氏の「Comparators」は、「体力 vs. スキル」として、プログラミングの能力とその訓練について分解してみせる。ここでいう「スキル」は対象領域の知識や経験、「体力」は基礎能力で、さらに「体力」を「筋力」(複雑なアルゴリズムを短時間で実装する能力)と「心肺能力」(コードをたくさん正しく書き続ける能力)に分けていて、それぞれ訓練方法が違うしいっしょにできない、というあたりが面白い。

 そのほか、内定女子の会社訪問記が、働きながら37才で大学に入学したmizzy氏。PHP連載が、リバースプロキシやWebブラウザでのHTTPキャッシュ。JavaScript連載が、Chrome Developer Toolsを使ったデバッグ。SQL連載は、SELECTについて、データ参照としての多義性や、データベース設計の正しさの必要性などを解説。Java連載が、Webシステムでよくあるボトルネックや、Scalaの注意点など。

「Software Design」2013年1月号

 年末に通読したのでメモ。

 この号は新春特大号で、特別付録として「法輪寺電電宮 情報安全護符シール」が付いている。第2特集も「キーパーソンに聞く 2013年に来そうな技術・ビジョンはこれだ!」として、OS、ソフトウェア開発、情報技術、ネットワーク技術、SIerのそれぞれについて識者が語る。

 第1特集は、「いざというときに備えるシステムバックアップ」と題して、バックアップを中心としたディスク関連の解説。バックアップ今昔、dumpやddなどのUNIXバックアップ系コマンド、Nifty Cloud上の運用サービスで使っている方法(Amanda等)、AWS上のバックアップサービスAWS Storage Gateway、ハードディスクに関する蘊蓄、復旧業者インタビューときて、最後はFusion-ioの長谷川氏によるFlashストレージの特性の解説。

 Flashストレージといえば、Linuxカーネル連載も、NAND Flashストレージに特化したF2FS(Flash Friendly File System)の解説。

 単発記事「インターネットを陰で見守るAkamai」は、AkamaiのCDNのベースであるAkamai Intelligent PlatformとGHostのあと、EdgeCacheやWAF、Siteshield、Blackholding、ダイナミックマッピングなどの「攻撃防御」サービスを紹介している。また、「クロス開発環境『Qt Quick』入門」は、Qtを使いJavaScriptでGUIを開発するQt Quickの解説。

 インタビュー連載「Software Designers」では、ジャクソン法の人の息子のDaniel Jacksonが、MITのオンライン教育「edX」などについて語る。

 そのほか、Ubuntu連載が、UbuntuからNexus 7とデータをやりとりする方法で、特にMTPまわり。ハイパーバイザ連載が、割り込みのしくみの基礎。レッドハット連載が、支給PCで仮想マシン作成自動化環境を作った話。Emacs Win64連載が、IMEまわりの実装と、w3m.elやascopeの紹介。シェルスクリプト連載が、grepによるMaildirの振り分け。IPv6連載が、組織内での計画プロセスのあたり。iPhone開発連載が、アプリのプロモーションについて。Android開発連載が、マルチプラットフォーム開発環境の第2回でRhodesの紹介。温故知新連載が、CPUのバグや、暴走の元になる仕様(?)の例。はんだづけカフェ連載が、Maker Faire New Yorkレポート。Hack For Japan連載が、IT Bootcampスタッフ&講師陣による、ふり返り。

「クーリエ・ジャポン」2013年2月号「未来の「ブラック企業」はこうなる」

 Amazonに対抗して「楽天が6月にも即日配送」とか、「書籍、無料で当日配送 ヨドバシがネット通販」とか、逆に書籍以外の商品の重みを増やしているAmazonでは「Amazon、何でも送料無料から一歩後退!? 「あわせ買い」開始」とか、ネット販売の配送は競争で大変そうだ。そういう自分も、送料無料やら即日配送やらの恩恵を大いに受けているんだけど。

 という中、「仕事がなくなっていく問題と未来のブラック企業について - Future Insight」経由で、「クーリエ・ジャポン」2013年2月号の「未来の「ブラック企業」はこうなる」という記事を知って、読んだ。

 米国で記者がネット通販の倉庫で働いた潜入取材レポート。以前読んだ「アマゾン・ドット・コムの光と影」と同じようなカテゴリーの話なんだけど、もっと合理的にシステマチックに時間あたりの成果(生産性)を上げる。そのために、有給休暇も昇給もない派遣労働者を多数採用し、新人は1分でも遅刻すると(奥さんが産気づこうと)即解雇というような“合理的”な労働体系を築く。合理的にブラック。

顧客がそれを求めていることをみなさんには理解してもらいたい。

 早く安く配送されて消費者はうれしいし、効率化されて生産性が上がって企業はうれしいし、田舎町に雇用が増えて労働者はうれしい。マルクスの時代とは違って低収益競争のため、時間あたりの売り上げが上がったぶんを企業がまる儲けにできるわけでもなさそう(よく知らないけど)。ロボット化するには低収益競争で大変そうだし、それだと雇用が減るし。しかし。

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