HOSTING-PRO 2009「クラウドによる次世代ITプラットフォームの実際」
HOSTING-PRO 2009というホスティング業界のイベントを見に行ってきました。その中で、ライブドアの伊勢さんと、はてなの田中さんが登壇する「クラウドによる次世代ITプラットフォームの実際」というセッションを見てきました。
内容は、大きな規模のWebアプリケーションサービスを高度な技術で支えている2社が、クラウドを斬るというもの。現実的な視点から、クラウド的な柔軟性をインフラに持たせるのが重要であって、クラウドサービスそのものは場合による、という話になっていたと思います。
以下、メモ。
司会:櫨山寛章(奈良先端)
- 事業者の視点でクラウドを斬ってみる
- 「クラウド」ってなに?
- ACMでも「クラウド」を定義しようという試みがある
みんなのクラウド(伊勢)
- みんなのクラウド、略して「みんクラ」(笑)
- クラウドってなに?
- ググってみると「ユーザーはブラウザだけ、処理はネットで」とかなんとか
- Webアプリの裏側がどうなっているかユーザーは知らない
- ブラウザ - アプリ - プラットフォーム - インフラ
- 各インスタンス間のインターフェイスを極限まで抽象化したのがクラウド
- クラウドにいくつかの側面
- クラウドアプリケーション:すべてのWeb2.0系サービス
- クラウドプラットフォーム:ECS/S3、GAE
- クラウドインフラ:グリッド、ネットワーク(広域イーサ、CDN)
- クラウドプラットフォーム
- いちばん注目されている
- 「仮想化と分散化、プロビジョニングの技術によって、動的可変なサーバーリソースを従量課金で提供すること」(ポイント4つ)
- VPS、ネットワークコンピューティング、グリッド、ユーティリティコンピューティングは、クラウドの構成技術
- SaaSとASPの違い
- SaaSはクラウド上のサービス、ASPは非クラウド上のサービス
- コスト
- EC2やGAEのベーシックなプラン:7,000~8,000円/月
- トラフィックは従量制
- livedoor RentaiServerでいうと
- リソースはADVANCE FASTプラン
- 17,600円(約2倍)
- Virtuozzo利用
- 価格はFlex Server Plusプラン
- 共用サーバー、ディスク2GB
- リソースはADVANCE FASTプラン
- レンサバのトラフィック
- livedoorで、下り約5GB/月、上り約32GB/月
- これはAmazonで$79.79
- クラウドのここが弱い
- プランの選択肢が多すぎる
- ユーザーは自分でそんなに選べない
- すべて英語
- 技術文書ならいいが、約款や料金プラン、責任分岐点などの契約文書とか
- 勝手に1000CPUとか割り当てられることも
- 料金がはね上がる
- たまに全落ちする
- 自分たちの努力ではなんともならない
- プランの選択肢が多すぎる
- 結局奥が透けている
- クラウドというよりミスト?(笑)
- 懸念
- サービスのクオリティがクラウドしだいに
- レスポンスとか
- リスクもクラウドしだいに
- 組織的な開発、検証、運用には向かない
- 1人でやるにはいい
- エンジニアのプラットフォームリテラシの低下の懸念
- できるプログラマは、下のプラットフォームも知っている
- チューニングできないプログラマばかりに?
- 差別化のための競争力が低下
- サービスのクオリティがクラウドしだいに
- 個人デベロッパー向けの香りを感じる
- クラウド的な技術を取り入れていくのはよい
はてな的クラウドコンピューティング(田中)
- クラウドとは
- SaaS的な要素と、データセンターのハードウェアリソースと、2通りの視点からの定義が混在している
- とりあえず「必要なときに必要なだけ使える」
- UCBの論文がよかった
- クラウドのAPI
- GAE、Azule、EC2/S2の順に抽象度が高い
- 抽象度が高いと、できることが限定されるが、考える必要のあることが減る
- レイヤー
- ユーザー -(WebAPI)- SaaS -(クラウドAPI)- クラウド -(DC、ラック、回線)- インフラ
- クラウドのメリット
- スケーラビリティ
- ほぼ無限
- スモールスタート
- 従量課金
- 負荷のピークへの即時対応
- 動的なリソースの変更
- スケーラビリティ
- パブリッククラウドとプライベートクラウド
- 企業内クラウドも
- はてなのインフラもこの意味でクラウド的な要素を持つ
- はてなのシステム
- ウェブサービス
- 非同期ジョブシステム
- 並列計算クラスター
- 物理サーバー500台、仮想化で890台ぶん
- 並列計算クラスターが増量中
- クラウド的要素
- 仮想化で柔軟なリソース制御
- ウェブアプリケーションのデプロイシステム
- 高いスケーラビリティを実現する構成
- 台数さえ増やせばスケールさせられる構成
- 分散ストレージ
- 並列計算クラスター
- 外部リソースとの連係
- アプリケーション間の疎結合化
- リソースのロケションに依存しない構成
- 公開すればそのままWebAPIに
- 現状のシステム
- DCでラックを借りて、自前で構築
- 理由(2001年当時)
- 安価なインフラがなかった
- スモールスタートが困難
- 柔軟な構成がとれない
- いちばん欲しいもの
- 柔軟で効率の高いアプリケーションの環境
- → 自前
- 将来の考え
- 差別化にならない部分はアウトソースできる
- Webアプリケーションフレームワークなど
- 特定のクラウドサービスにロックインされたくはない。共通したAPIの上であればロックインされない
- 本質的な部分に特化
- 差別化にならない部分はアウトソースできる
- クラウド提供者のメリット:集積度を高めてコストを減らす
- 要素技術がコモディティ化→水平分業
- 要素技術の革新→垂直分業
- コンピューティングリソースはコモディティ化が強烈に進む
- 集積によりコストメリット
- 今のクラウドの問題
- ある程度の規模になると自前が安い
- パフォーマンス(帯域、レスポンス)
- コアロジックとの連係係
- 切り分け、レスポンス
Q&A
- クラウドで水平分業が加速するのか。責任分岐点はきれいに分けられるか(櫨山)
- 伊勢
- アプリの種類ごとに要求が異なる
- 提供側もきれいにできず、デコボコにせざるをえない
- 例:Webアプリ会社はけっこうApacheのモジュールを自前で作っている。この場合の分け方
- キッチリ決められるのはひとにぎり
- 田中
- すべての要求を満たすのは無理
- 共通で使えそうな、マジョリティな要求を見つける
- 例:ストレージなどのシンプルなもの
- 伊勢
- こんなクラウドなら使いたいというのは(櫨山)
- 伊勢
- Webアプリのレイヤーはほぼクラウド
- プロビジョニングは手動
- そこを半自動にしていく
- 人がやったことを元にツール化、自動化
- そういうツールを売ろうと考えがちだが、相手によって違うので難しい
- 事例として提供→Edge Source
- いっしょにやりましょう、というアプローチo
- 汎用ツールを使いつつ、稼動を監視して、次の一手を打つのが仕事
- 田中
- 運用のベストプラクティスを支援するもの
- 負荷の変動が:
- 大きくないときには自前でやれる
- 大きい部分をどうにかするAPIがあるといいなあ(妄想)
- 個人情報の扱いとか
- 櫨山
- クオリティに課題か
- 伊勢
- 新しいサービスが当たるかどうかわかないが、そこに設備を大量に当てる必要がある
- 最初にクラウドを使い、大きくなったら自前にマイグレーションする、とできるといい
- 伊勢
- APIの標準化の動きは?
- 田中
- 標準化は難しい
- Webアプリケーションフレームワークなら
- 標準化されていればほかにも移せる
- 田中
- クラウドのデータバックアップはインターネットごしで?
- 伊勢
- インターネットで。クラウドなので
- 将来はインターネットインフラの進化に期待
- ASをまたいだライブマイグレーションの実験も行なわれている
- 数分でできる
- オープンな乗りかえのため
- 田中
- UCBの論文によると、HDDで郵送してくれるサービスもあるらしい
- ログやデータベースのバックアップに使えそう
- クラウドの差別化になるのでは
- 伊勢
- livedoorやはてなでクラウドサービスは?
- 伊勢
- クラウドを構成する技術は実装している。泥くさい部分
- オープンソースで出している
- HTTPを使った分散ストレージも近日公開予定
- 田中
- ものはある
- が、ドキュメントもないし、外部に提供するには規則やサービスを整えなくてはならない
- オープンにできるものはオープンにしていく
- クラウドサービスは規模の世界
- 今の規模では無謀
- 伊勢
- 日本の事業者はクラウドに参入できるか?
- 伊勢
- かなりコストがかかる。現段階では難しい
- ホスティング事業者にとってのクラウドは、商品ではなくテクノロジー
- クラウドの要素技術をホスティングに生かす
- ただし、客単価は下がる(笑)
- 田中
- ユーザーから見ると、ホスティングはサーバーを増やすときなどに、契約やセットアップの時間や手間がかかる
- クラウドはそこが便利
- そういう要素をとりいれたサービスメニューがホスティングにあると需要があるのでは
- 伊勢
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クラウドについてよく分かりました
またきます