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読書やコンピュータなどに関するメモ

「泣き虫弱虫諸葛孔明」第伍部

泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部
酒見 賢一
文藝春秋
売り上げランキング: 206,699

 酒見賢一版の三国志が完結した。劉備、関羽、張飛とも亡くなったあとの、南征と北伐、そして孔明の死を描く。

 最初のころのハチャメチャさに比べるとおとなしくなった。でも、「三國誌」での戦下手丞相と「三国志演義」での天才軍師とのギャップをメタフィクション的にネタにする路線はずっと一貫していたと思う。

「リトル・フォレスト」1・2

リトル・フォレスト(1) (アフタヌーンコミックス)
講談社 (2012-12-03)
売り上げランキング: 50,945
リトル・フォレスト(2) (アフタヌーンコミックス)
講談社 (2012-12-03)
売り上げランキング: 45,730

 カテゴリーとしては食べ物マンガだろうか。東北(岩手)の過疎の村で一人暮らしをする若い女性の自給自足生活を、毎回1つの料理を中心に描く。各エピソードには「nth dish」という番号が付けられている。

 一人称的な創作エッセイとでもいう感じで、内容も雰囲気も違うけど、形式や路線としては「大東京ビンボー生活マニュアル」を連想した。本書は2002年〜2005年に「月刊アフタヌーン」に連載された作品で、作者(男性)の体験が元になっているらしい。

 主人公はスローライフというほど前向きではなくて、一度街で暮らして、訳アリで逃げるように戻ってきたらしい。まあでも、料理はおいしそうだ。

 最初の1st dishがグミの実をジャムにして食べる話。甘い物では、あまざけを作る話(5th dish)とか、あまざけをベースに米サワーを作る話(23rd dish)とかも。

 主食まわりでは、ばっけみそ(6th dish)が素朴でおいしそう。くるみごはん(13th dish)とかも。なっとうもち(4th dish)は、納豆を作るところから、というかそっちがメイン。

 合鴨の雛をかわいがり、田んぼで活躍してもらうエピソードでは、最後は自分の手でシメて食べるところも描いている。別のエピソードでの別の人物の言葉でいうと「他人に殺させといて殺し方に文句をつけるような、そんな人生送るのはやだなって思ったんだよね」。

リトル・フォレスト 夏・秋 Blu-ray
松竹 (2015-01-28)
売り上げランキング: 4,082
リトル・フォレスト 冬・春 [Blu-ray]
松竹 (2015-07-29)
売り上げランキング: 3,934

 「リトル・フォレスト」夏・秋・冬・春の4部作として映画化もされている(BDやDVDでは夏・秋と冬・春の2巻)。実は先に映画を観て良かったので原作を読んだのだけど、驚くほどそのままだった。

 ちょっと秘密のありそうな若い美女役で橋本愛さんというのは、定番ですな。岩手だし。友達役で松岡茉優さんも出演している。

「桜花忍法帖」上・下

桜花忍法帖 バジリスク新章 (上) (講談社タイガ)
山田 正紀
講談社
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桜花忍法帖 バジリスク新章 (下) (講談社タイガ)
山田 正紀
講談社
売り上げランキング: 22,560

 アニメ化のニュースを見て、「バジリスク」の続編が書かれていることを知った。しかし、山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」を、せがわまさきが漫画化した「バジリスク」の続編を、山田正紀が小説で書くとは、なんか名前の語呂あわせみたいだ(笑)。

 「甲賀忍法帖」とも「バジリスク」とも、けっこうノリが違うので、原作厨には怒る人もいるかも。私は別物として楽しんだけど。二次創作とかスピンオフっぽい感じ。

 甲賀忍法帖が動物をモチーフにした忍法だとすると、こちらはSFやファンタジーのような超能力や魔法の世界といったところか。山田風太郎風というより、その影響を受けた後世の、半村良や夢枕貘を思わせる伝奇小説っぽくも感じる。

 なにしろ、徳川秀忠が忍者によって亜空間を見せられ、江与(お江)があの女傑2人の霊を呼び出す。最後には戦国で毎度おなじみのあの人物が再臨し、あの戦国ヒロインも降臨するという。

 それぞれタイプの違う美女によるチームという設定はアニメに抜いているかも。ただ、桜花と有情とか、絵にしづらい要素も多いなあ。

 ほかの山田風太郎作品っぽいねたや、バイオレンスジャックばりの設定、根来転寝(ねごろ・ごろね)みたいな杉浦茂っぽいネーミングとか、遊びもいろいろ。

「マンガでわかるホルモンの働き」

 少し前にKindleのサイエンスアイ新書セールで買って読んだ。マンガでわかるといっても、マンガは挿絵の延長で、それだけ読めばいいというわけではない。

 神経系と並行して内分泌系があるという話は聞いたことがあって、それってどういうことかを知りたくて読んだ。

 臓器で作られたホルモンが受容体に伝わることで、何らかの情報が伝達されて身体の動作に影響を与えるんだそうな。速いのが神経系で、内分泌系は遅い。出来事に反応するのが神経系で、抑えるのが内分泌系とか。でも神経伝達物質も広義のホルモンに入るのだとか。

 精神活動もやはり物質的な身体の活動によって起こっているのだよな、と月並みなことを思った。で、ホルモンに似た物質が身体に入ると身体を誤動作させると。人間の心や気持ちって、化学物質で簡単に変わっちゃうんだな。まあ典型的な例が酒や麻薬だったりするわけだけど。

 後半は男性ホルモンと女性ホルモンの話が中心となる。

 ところで本書によると、モツ料理の「ホルモン」が戦後の大阪で「放るモン」から来たというのは誤りで、戦前にはすっぽんなどの精力料理がホルモンと呼ばれていたんだとか。

「外天楼」

外天楼 (講談社コミックス)
講談社 (2013-09-30)
売り上げランキング: 5,344

何かすっきりさっぱりしたい気分になったので、1巻で完結するおすすめマンガをネットで調べて、本書をKindleで買って読んだ。

「ネットの感想を読む前に読んだ方がいい」というアドバイスに従って読んだけど、まさにその通りだった。作者お得意の、ゆるい雰囲気に伏線を張り巡らせる感じが好きならお勧め。

ミステリー仕立ての短編が集まった短編集。エロ本を手に入れようとするガキたちのエピソードに始まり、ヒーロー番組登場が没になった男のエピソードでちょっとアレッと思った。で、バラバラだと思われた各エピソードが実はつながっていたというのは選択肢として想像できたけど、こんな結末になるとは。

「東西奇ッ怪紳士録」

東西奇ッ怪紳士録 (小学館文庫)
水木 しげる
小学館
売り上げランキング: 119,518

 水木しげるが、古今東西広いジャンルで奇人の生涯をそれぞれ短編で紹介する短編集だ。奇人といっても、まとめて読んでみると建築や発明関係の人が多い。

 たとえば二笑亭の渡辺釜蔵と、シュヴァルの理想宮のフェルディナン・シュヴァルという、東西の奇怪建築を作った人物がそれぞれ取り上げられている。傑作「始祖鳥記」や筒井康隆「空飛ぶ表具屋」という小説でも取り上げられた、日本で初めて空を飛んだ浮田幸吉も「幸吉空を飛ぶ」で描かれる。最初のほうで大きなページ数を占めている平賀源内もそれらと同じカテゴリーか。これらの人物を、作中に登場する水木サンは羨望と同情の目で語る。

 「劇画ヒットラー」に続いて、アドルフ・ヒトラーも「国家をもて遊ぶ男」で登場する。ここでは前述のとおり、建築に執着する面を多めに描いている。

 「貸本末期の紳士たち」は、水木サンの自伝モノや奥さんの「ゲゲゲの女房」でもおなじみの、貸本マンガが廃れていく時代を、そこで出会った奇人たちを中心に描く。

 ちょっとノリが変わるのが、旅シリーズと呼ばれる、アフリカやボルネオ、ニューギニアのヘンテコな人々を取り上げた3作品。土着的でときに猥雑なノリで描かれる。

 以上のような感じで、脈絡があるようなないような、独特の人選が面白い。

「決戦! 関ヶ原2」

決戦!関ヶ原2
決戦!関ヶ原2
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葉室 麟 東郷 隆 宮本 昌孝 冲方 丁 天野 純希 吉川 永青 簑輪 諒
講談社
売り上げランキング: 12,560

 戦は実際に戦うまでの計略がすべてという考え方がある。さすがにそれは極論だと思うけど、それまでの日本で最大の戦なのに1日で終わった関ヶ原の合戦については、あてはまる部分が大きそう。

 本書は1つの合戦について人気作家が1篇ずつ短編小説を書く「決戦!」シリーズの最新刊で、最初に出た「決戦! 関ヶ原」に続いて関ヶ原を扱った本だ。

 私がいちばん面白く読んだのは、最初の「ダミアン長政」(葉室麟)だ。父如水(官兵衛、孝高)の反省から知略を隠して猪武者として振る舞っていた黒田長政が、関ヶ原に向けて戒めを破って謀略をキメる。そしてそこで見えた石田三成の狙いと、キリシタンである長政の考えとは。処刑前の三成と長政の会話とか、長政と如水の右手左手の話とか、有名な逸話をうまくひねっている。

 「燃ゆる病葉」(沖方丁)も、関ヶ原に向けて万策を練りつつ、読みきれずに破れた大谷吉継を描く。本作の大谷吉継は、理では家康を推しつつ、友情で三成を支えるという黄金パターン。

 戦略・戦術中心をちょっとヒネって、本物の戦をシミュレーションウォーゲームのようにしか見られなくなった小早川秀秋を描いたのが「秀秋の戯」(天野純希)。一方、調略や裏切りをテーマに、ちょっと寓話や説話っぽい味を出しているのが「名だけを残して」(箕輪諒)だ。

 それらと反対に武人の戦を描いたのが、「三成に過ぎたるもの」と言われた島左近を描いた「過ぎたるもの」(吉川永青)と、「家康に過ぎたるもの」と言われた本多忠勝の生涯を描いた「蜻蛉切」(宮本昌孝)だ。また、「戦さ神」(東郷隆)は、同著者の「センゴク兄弟」でも登場した仙石勝久と、可児才蔵の活躍を描く。

 それにしても、いずれの話でも石田三成は小悪人とか愚かとかいった評価はなされていないのが興味深い。平壊者だったり福島正則に恨まれていたりとかはあるけど。まあ最近は三成をベタに小物扱いすると古く感じるからなあ。

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